信頼されるという事は。(魔人)
東京魔人学園剣風帳の壬生×女主です。
えっと少し補足。
この話、剣風帳でも前半の方で本来なら壬生はまだ未登場。
独自設定で師匠つながりにより学校や仲間は関係なく知り合っている、という設定です。
その光景を見たとき、僕は一体どんな顔をしていたのだろう。
僕がお茶を入れるために席を立って、まだ5分から10分くらいしかたっていないはずなのに。
カップとポットを乗せたお盆をテーブルに置くと、そっと手を伸ばして彼女の髪に触れた。
彼女の髪はさらさらと僕の指からこぼれてゆく。
それでも彼女は―――目を覚まさない。
夏休みの宿題を一緒にやろうと声をかけてきたのは彼女の方だった。
地道に課題をこなしながら彼女の目が次第にぼんやりと眠そうになってきたので眠気覚ましに、と席を立って紅茶を入れてきたのだけれど―――
少し、遅かったようだ。
いつものお気に入りのクッションを枕に気持ちよさそうに眠っている。
「…桜…?起きてくれないか…?」
そっと声をかけるが、起きる気配は全くない。
あまりにも幸せそうな寝顔に無理に起こすのがかわいそうな気になる。
疲れているのだろう。
先日、江戸川区で起こった事件にもかかわったようだし。
だが――
「少し、警戒心がなさすぎるね」
思わずため息が漏れた。
「僕の性別は、わかっているよね?桜……」
前々から、僕と(つまり男と)二人きりになる事に頓着しない彼女の性格をどう判断すればいいのか迷っていたのだが、寝入られてしまうと…男として見てもらえていないのではないか、と思ってしまう。
信頼されているのはうれしいのだが。…うれしいのだが、うれしくない。
「君にとって僕は…どういう存在、なんだい?」
ただの友人?知り合い?それとも――
「あさましいな。僕は」
自分の手を広げて見た。
血に染まった、手。
「こんな…血と罪に染まった手で、光を求めようとするなんて」
その心まで、望むなんて―――。
最初はただ、放っておけないと思った。目を離せない、と。
それが仕事なのだから、と最初の頃はそう思っていた。
それが違うと知ったのはあの涙を見たとき。
泣きじゃくる君をこの腕に抱いたときに感じた、まごう事なき優越感。独占欲。
仕事だから、ではなかった―――。
君の一番近くにいるのは、僕でありたい。常に君と行動を共にしている仲間たちではなく。
君の、その心の中を知るのは、僕だけでありたい。
そう、望んだ事を覚えている。
強い君、泣かない君の唯一涙を流せる場所でありたい、と。
それだけで満足なはずだったのに。
心のどこかから声が聞こえる。
『もっと、もっと』
彼女の涙だけでなく。
彼女の心を。体を。彼女のすべてが欲しいと声がする。
「桜―――」
彼女はいまだ、夢の中。
目覚める気配はない。
茶色がかったその髪のひと房を手に取り、口づける。
君が、好きだよ。でも――
僕の手は、汚れているから。血と罪に染まっているから。
本当は君に触れる権利すら―――ない。
だけどどうか、これだけは許してほしい。
君を思う、この気持ちだけは。
壬生君の独白。
や、彼はやっぱりその背負う罪とその覚悟が魅力的なキャラなわけでして。
ちょっと女主に夢見すぎな所もありますが。
まだ仲間入り前なんでどんな事をしているのかは詳しい事は知らない、ということになってます。
女主も壬生の裏の仕事は知らない。師匠が紹介してくれた友人、くらいに思ってます。
ちなみに女主が泣いたのは比良坂の事件ですね。
さすがに目の前で自分をかばって死なれるのはきついと思うんですよ、あれ。