ひとひらのささめごと

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初めての贈り物

今日6月20日はジルオールのレムオンの誕生日。
なので黒歴史ではなく新作を書きたいと思います。
 
名もなき村主人公のイオン(ノーブル伯)のお話。
 


「レムオン様、お嬢様よりお手紙と荷物が届いております」
城から戻ったレムオンを迎えたセバスチャンはそう言って小さな包みをレムオンに手渡した。
「イオンから…?」
実際には血のつながりのない義理の妹は、仕事柄バイアシオンじゅうをめぐっているが、頻繁というほどではなくてもそれなりの頻度でロストールの屋敷に顔を出している。
少なくとも研究のため同じように世界を飛び回っているらしいエストよりはよほど顔を合わせる事が多い。
そのためなのか、このような包みを送ってくるなどという事は今まで皆無であったのだが…
 
部屋に戻ったレムオンはおもむろにペーパーナイフで手紙の封を開く。
そこには女性らしい柔らかな筆跡で誕生日の祝いが書かれていた。
「……そういえば、明日は誕生日だったか…」
レムオンの誕生日ともなると、現公爵であるためにいろいろと騒がしい事になる。
端的にいえばパーティーを開かねばならない。
その準備に追われ、もちろん仕事に手を抜くことなど考えもつかないレムオンはこのところ忙しい日々を過ごしていた。
パーティーが己の誕生日の祝いである事を思わず忘れてしまうほど…
 
続いて開いた小さな包みにはきれいに磨かれた石が入っていた。
「…これは、聖光石か?」
小さなかけらがいくつも組み合わされ、台に固定されているそれはどうやらペーパーウェイトのようだった。
『聖光石はお守りにもなるそうですから。お仕事の時にでも使ってください』
こちらに同封されていたカードにはそれだけ書かれている。
 
「ふん…」
明日送られてくるであろう絢爛豪華なプレゼントとは比べ物にならないほど素朴なそれを、レムオンは黙って自分の仕事机の上に置いた。
そしてそれは以後、この部屋の主が彼である間中ずっと、この部屋にその素朴な姿を置き続けていた…
 


まだ兄妹になってから間もない二人。
なんの裏もない純粋な好意がうれしいくせに素直でない、でも行動はばればれの兄様でした。