ひとひらのささめごと

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初めまして。よろしく(GPM)

「介入、開始」の続きです。
 


 芝村屋敷の一室。
 末姫…舞の部屋。
 
 『こんばんは』
 不意に聞こえた声にはじかれたように舞は顔をあげ、部屋を見回した。
 だが、自分以外はだれもいない。
 「…?」
 『私の体はそちらにはありません。私はあなたご自身に“介入”しています』
 再び聞こえた声に舞はわずかに眉を寄せた。
 「介入…だと?」
 『はい。言うなれば…そうですね、憑依しているとでもいうのでしょうか。私自身はとても遠い所にいるのですが、心だけあなたの中に出現させているといった状況だと、ご理解ください』
 「…そなた何者だ?なぜそのような事をする?」
 『私は…介入者。そうお呼びください。私があなたに介入した訳は…とある人を救うためです。私は直接そちらへ行くことができません。ですから、そちらにいる方に介入するしか、その人を救う方法がないのです』
 舞はむぅと表情をゆがめた。
 「こちらの都合というものを考えぬのか?迷惑だ。即刻私から離れよ」
 『それは…できません。一度介入を始めたら、時が来るまでは離れられないのです』
 「何だと!?」
 怒りのボルテージが上がってゆく舞に対して介入者はあくまで穏やかに、ていねいに言葉を重ねた。
 『お願いします。なるべくご迷惑をかけないように気をつけますから…。私は、何としても彼を救いたいのです』
 「………」
 『私は異界の者です。だからこそわかる事、知っている事、多々あります。その情報をあなたにお教えする…という事ではいかがですか?』
 「情報を交換というわけか」
 『はい』
 舞はふむ…と一つうなった。
 「…いいだろう。ただし、私の邪魔はするな」
 『心します』
 それが、奇妙な共同生活の始まりだった。
 
 介入者との生活は舞が思ったよりずっと穏やかで大した問題も起こらなかった。
 新しい戦車部隊に配属になり、介入者に気を使っている余裕がないという事もあるのだろうが。
 普段からそこに…自分の中、にいる事はわかっている。
 だが、彼女…口調から判断するに介入者は女だ…から話しかけてくる事はあまりない。
 たまにもっと周囲の人と話して、打ち解けた方がいいですよ、と言ってくるくらいのものだ。
 「…介入者」
 『はい』
 深夜、整備員詰所において発言力を手に入れるために「電子妖精」作成しながら舞が介入者に声をかけた。
 「…そなたの望みは既に聞いた。が、そのために私に何をさせようとしている?」
 『………』
 「答えよ。内容によっては協力してやらぬ事もない」
 最初、舞は介入者の事はハッキリと邪魔だと思っていた。
 しかし、ここ数日でその認識はいささか変わりつつあった。
 思ったより邪魔でないこと。そして彼女の助言が的確であることが主な原因である。
 他者とのかかわりに重きをおくつもりはなかったが、彼女の言葉を聞き、多少ではあるが周囲の者と話す事も始めた。
 するとその言葉の端々に学ぶべきものがある事に気がついた。
 また、戦術について教えてくれる者もいる。
 そういった事柄が舞の態度を軟化させたのだ。
 『HERO。決戦存在HERO。それが私の望むものです』
 ポツリ、と介入者は言った。
 「HEROだと?」
 『はい。…あなた方芝村一族が望む…待ち続けるもの。そう、私はあなたに…絢爛舞踏をとることを望んでいます』
 「300の首を狩れ…と?」
 『そうです』
 介入者の声はあくまで静かだった。
 「そなたの言う者を救うにはHEROが必要だ、と?」
 『はい。彼を救えるのは多分、HEROだけです』
 舞はしばらく押し黙った。
 何やら考えているようだが、それでもプログラムの手が止まらないあたりが流石電子の巫子王である。
 「…いいだろう」
 ようやく口を開くと舞は一つうなづいた。
 「なってやろうではないか。絢爛舞踏…HEROに」
 『…良いのですか?あれは…』
 「おかしな奴だな。そなたの望みであろう?」
 『はい。でも…』
 「人類の規格外、か。構わぬ。もとより嫌われる事は芝村の責務だ。それに…」
 『それに?』
 舞は不敵に笑った。
 「待つのも、守られる事も好かぬ」
 『???』
 「…かつて父が言っていた。娘を守るにはHEROが必要だ、と。私がこの最前線に来たのもHEROを探すためだ。だが…」
 一端言葉を切る。
 その瞳には決意があった。
 「私は守られる事は好かぬ。私は芝村…守るものだ!」
 


介入先は舞にしたいけど、舞を出さないのはさみしい…という私のわがままで介入者と舞が共存、という状態になってます。
オフィシャル設定は丸無視なので本気にしないように。
というかオフィシャルには介入者っていないし。
舞姫は好きですよ。たぶんGPMの中では一番。